The Story
「ひとりでこの世に」という詩集がある。
このすごいタイトルは、そうね、谷川俊太郎だよね、と
初めて本を開いてみて気づいた。
本文は精興社書体で書かれていた。
谷川さんの詩と精興社書体という最強の組み合わせ。
この書体でなくてはこの詩集はありえなかったのかもしれない。
谷川俊太郎+精興社書体=幸せ。
最近は、この”精興社書体センサー”みたいなものが稼働している気がする。
この書体で書かれた本を探しているのではなく
この書体で書かれた本が手元にやってくる。
書体だけではなく、こういうことありませんか?
自分の手元に集まってきてしまうもの。
書体の話で始まってしまったけれど、
この中の
「午後二時の」という詩の頭がすごい。
午後二時の太陽は
明るいばかりで・•
この二行がたまらなく好きだ。
読んだ瞬間に、色や温度や匂いを想像してしまった。
いいなあ・・「午後二時の太陽」なんていうネーミングの何かがあったら
手元に置きたくなるなあ。
もちろんこの本のタイトルである
「ひとりでこの世に」の詩はとんでもなく素敵で
ちょっと息するのも止まるほど。
谷川さんは、詩は書きたいことがあるわけではなくて、
空気みたいにこの世の中にある文字を見つけて拾い上げて
書き出しているだけだ、とおっしゃる。
見えない文字を可視化している、ということなんだろうけど
その手順や理由はご本人も全くわからないらしい。
そんなことができる人がこの世を去った時
あれほどのニュースになったのは納得。
「午後二時の太陽は明るいばかりで」
なんていう言葉は
もしかしたら谷川さんの心の中にあった何かが
ふと文字として出てきたのかもしれない。
私の心の中にいるまだ見ぬ言葉に
これからどうやってアクセスするのか、
ちょっと楽しみだなあ、と思っている。
Visual Story Details
Subject:「ふり返る時間はそう長くはない」「飛びかかるような時間に」という手書き文字と、鳥のシルエット、躍動するオレンジ色の虎の描写。
Mood:静寂な思索とダイナミックな躍動感が同居する、詩的で感覚的な温かさ。
Theme:見えない言葉を可視化するプロセス、書体や言葉そのものが持つ物理的な温度や匂いの探求。
Artist:Kazue Shima (Visual Story Artist)







