The Story
静かに暮らしなさい」というのが、親の口グセだった。
子供の頃も、実は今も、この”静かに暮らす”という意味を今ひとつわからないまま。
行動を静かにするのか。例えば、ドアをバタン!と閉めない、とか、食事時に音を立てて
お味噌汁をすすらない、とか、そういうことか。
または、生き方の話であったのか。人に迷惑をかけない、とか、謙虚に生きる、とか。
彼らの場合、どちらの可能性もあるから、両方の意味があるのかもしれない。
では、私はどのように暮らしてきたのか、というと、音を立てて暮らしてきた、と思う。
と言っても、ドアは静かに閉めるし、音を立てて食べるのは蕎麦くらい。
なので、音を立てて暮らしてきたのは、生き方の話の方。
おそらく、たくさんの人に迷惑もかけただろうし、謙虚さがあったとは言えず、心は常に
大騒ぎしていて、きっとガチャガチャと暮らしてきたのだと思う。
でもそのガチャガチャの8割くらいは、あらゆる感動なのだ。
誰かの言葉や、素敵な音楽、心が揺さぶられた本、悶絶するほど美味しかった中華料理や、
一気に最終話まで見てしまったNetflixのドラマ。
ブルブルっとしたモノを、ガチャガチャと大騒ぎをしながら、周りの人に話す。
さぞかしうるさいだろうし、めんどくさい話だったかもしれない。
でも、どうにも静かにしていられない。この感想を!なんとか箱に詰め込んで、
「こ、これ!!持っていって!」と人に渡したい。
きっと皆、遠くからこのガチャガチャと音が聞こえてくると「ああ、またあいつが来たぞ」
と身構えていたのだろうけれど、身構えてほしい。ガチャガチャの音が大きいほど、
きっと大きな感動かもしれないので。
ちなみに、このガチャガチャが親に手渡せたことはない。
Visual Story Details
Subject:瓶の詰まった箱を抱え、ガチャガチャと音を立てて歩く人物を描いた、感動を人に手渡したいという衝動をテーマにしたナラティブイラスト。
Mood:ユーモラスで、少し騒がしく、でも温かい。静かな受容の余韻も残る。
Theme:「静かに暮らしなさい」という教えと、感動を叫ばずにいられない生き方の対比。表現すること、伝えることへの、尽きない衝動。
Artist:Kazue Shima (Visual Story Artist)







