field notes
クラフト紙の表紙に、オレンジ色の紙を切り抜いた「EURO」の文字を貼り、針と糸で縫う様子。旅の記憶を振り返る時間をテーマにした、手作りの旅ノート作品。

振り返りの旅ノート : ヨーロッパ2026 カバー

The Story

初めて、旅を振り返りながら綴ろうとしている。昔は、旅はその場で全て終わるもの、留めようとせず、時間と一緒に流れていくものだとずっと思っていたのだけど、今になるとあの時間を大切に、一つ一つ自分の中に置き直したいと思っている。

旅は終わってしまうと、とにかくそっけない。あんなに思わせぶりに何ヶ月も頭の中にチラチラといすわっていたくせに、帰りにはもういない。家に戻った途端に荷物をほどいて汚れ物を洗濯かごに入れる。悩んでつけたバッグタグを取り外して、クローゼットの奥にしまったスーツケースは、もう赤の他人だ。

それでも、今回は”振り返りの旅”があるから、まだ少し旅の続きをしている気もしている。

初めての国、そして35年ぶりに訪れる国、たくさんのものを見てきた私に、それぞれどう映るんだろうか、どう思うんだろうか、と旅の前から楽しみだった。

今回は、帰国後に留めることは決めていたので、旅の仕方をあえて流れていくようなものにしたくて、たくさん鉄道に乗って移動することにした。
景色と時間と、人が流れていく中にいて感じることは、しっくりとくる。
そんな時間とそれぞれのシーンを、1本の記録に繋いでいくノート作りをしよう。

そこで表紙は最初に仕上げないことにした。
ページを進めながら、表紙を時々”縫い上げる”。旅の記録が終わる頃に、きっとこの表紙も縫いおわるに違いない。なかなか完成しないカバーというのも良いものだ。

無印良品で、クラフト紙の表紙にオレンジ色の背クロスがついたノートを買ったので、手持ちの100色のタント紙の中から近い色を選び、「EURO」という文字を切り出してみた。いろんな紙を切ってきたけれど、切り味が好きなのはやっぱりタント紙。サクッと切れる。
厳密に言うと、切り絵というジャンルがあるので、黒い紙で切れ味の良い紙は色々あるが、たくさんの色があって切れ具合も良い、となるとタント紙がいいだろうなあと思う。

4つのアルファベットを切り出してみたのだけれど、なんか間抜けな感じがしたので、「U」の文字だけは、ケルンで訪れたチョコレート博物館のリーフレットを切ってみる。
この茶色と紫の組み合わせのデザインが、オレンジ色のタント紙としっくりくるじゃないの。

クラフト紙の表紙に貼った、切り抜きの「EURO」の文字と、横に置いた黒いハサミ。旅の記憶を振り返る時間をテーマにした、手作りの旅ノート作品。
クラフト紙の表紙に貼った「R」の文字の縁に並ぶ小さな穴と、目打ち。旅の記憶を振り返る時間をテーマにした、手作りの旅ノート作品。

こんなふうに持って帰ってきたチケットやパンフレットの端っこを切ったりして飾りにするのが好き。予定しない色が入ることや、いずれ捨ててしまう分厚いパンフレットの切れ端をノートに使っておくのは、良い記念になる。

日付と国の名前を白いペンで書き込んで表紙の概要は出来上がり。後は、このプスプスと開けた穴に毎日少しずつ糸を通していくだけだ。
寝る前に、少しずつ。これが旅を綴じる私の日々の儀式になる。

さて、思い出していこう。それぞれの場所の匂いや足の感覚を。もしかしたらまた訪れるかもしれないけれど、これが最後になるかもしれないもの。

Visual Story Details

Subject:クラフト紙の表紙のノートに、オレンジ色のタント紙を切り出した「EURO」の文字を貼り、針と糸で縫い進める手作りの旅ノート。「U」はケルンのチョコレート博物館のリーフレット、日付と国名は白いペンの手書き。

Mood:旅が終わったあとの余韻と、記憶を一つずつ置き直していく静かな時間。毎晩少しずつ綴じていく、急がない落ち着き。

Theme:振り返りの旅ノート作り。旅の記憶を一つずつ置き直し、紙を縫ってつないでいく、完成を急がない手作りの時間。

Artist:Kazue Shima (Visual Story Artist)

Related Projects