The Story
昔通った、馴染みのバーに来る。
無理してテキーラを舐めるけど、やっぱり今も苦手だな、と思う。
あの夏、学生時代に、ある団体の誘いで自然保護活動のボランティアとして参加し、地球の裏側に行って、見た事もない美しい男に出会った。
まだ東京の大学に馴染まないうちに知らない国に行き、目の前に情熱的で優しいその男性が現れたことで私の人生はガラリと変わってしまった。
まるで別の太陽を見ているような、白にも近い陽の光と、乾いた土に並ぶ原色の建物。あたりから聞こえてくる陽気な音楽や、肌をさすような温度。こんな南米という地も私をどこか開放的にさせたのだと思う。
道端で花を売る少年に「フロール・ポル・ファボール」と慣れた様子で1本の花を買い、私に手渡す。何もかも初めての世界に私は戸惑った。
戸惑いながらも、恋をした。
今、東京のこのバーで飲むテキーラの味は、少しずつ何かが足りないような、中途半端な味で私をイラつかせる。
でもなぜか蒸し暑い夏になると、何かを無理矢理にでも思い起こしたい。
この店で思い出せる記憶も中途半端だけど、そのくらいでいいのかもしれない。
Visual Story Details
Subject:東京のバーで思い出す、地球の裏側で出会った男。
Mood:懐かしさと開放感が入り混じる、少し切なくノスタルジックな温度。
Theme:若い日に出会った鮮やかな記憶と、歳を重ねた今の「中途半端さ」の対比。それでもいい、と思える静かな肯定。
Artist:Kazue Shima (Visual Story Artist)







